2015年06月01日

大江戸の佃の磯ではなく

今日は、二週間にわたる奈良の「お水取り」の最終日。
これが終わると春だったはずだったが、
春どころか、今日一日、急激な冷え込みとなり、
日本列島が、ブルッと震え上がるような寒さが舞い戻ってきた。
こんな寒い春を目の前にすると、歌舞伎の演目『河内山』の
「冴えかえる 春の寒さに 降る雨も、暮れていつしか 雪となり~」
セリフの一節が、ふと、よぎる。
当地では、さすがに雪はなかったが、
北国では、こんな風な一日ではなかったかと思う。
また、歌舞伎の演目の一つに、そんな行きつ戻りつする春を舞台にした
『三人吉三(さんにんきちさ)』という人気芝居がある。
この語り、美文で名高い典型的な七五調。
その登場人物の一人、
お嬢吉三が語る「厄払い」と呼ばれる独白は、歌舞伎の名セリフとして知られている。
ちょっと紹介すると、
月も朧(おぼろ)に 白魚の
篝(かがり)も霞(かす)む 春の空
冷てえ風も ほろ酔いに
心持ちよく うかうかと
浮かれ烏(からす)の ただ一羽...
と続き、
「こいつぁ春から 縁起がいいわい」
という名セリフで締めとなる。
河竹 黙阿弥が書いた、この『三人吉三』は、
その当時の情景が写実的に表わされているという。
まず、その当時、磯では白魚漁のかがり火が焚かれることが早春の風物詩。
そんなかがり火が霞んで見えるようなおぼろ月夜が舞台の一幕。
歌舞伎の中でも随一の人気演目でもある。
大江戸の佃の磯ではなく、
はるか海の向こうのバチカンでは、今日、
磯のかがり火ならず、コンクラーベのストーブから何度かの施行の末、
やっと白い煙が上がり、
新しい法王の誕生が決まったという知らせが届いた。
アルゼンチン出身のホルヘ・ベルゴリオ枢機卿が法王に選出され、
フランシスコ1世と名乗ることになったという。
このことで中南米が沸き立っているという。
この人たちにとっては新たな幕開けを意味する春が来たという気分だろう。
まさに、
「こいつぁ春から 縁起がいいわい」


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Posted by opfj at 18:41│Comments(0)fg
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